前回は、発達障害の定義・分類や学校・行政の支援について書きました。そして、代表的な障害として以下の3つを挙げました。
- 自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 注意欠如・多動症 / 注意欠如・多動性障害(ADHD)
- 学習症 / 学習障害(LD)、限局性学習症(SLD)
それぞれの人が持つ独特の特徴を「特性」と言います。また、発達段階で見られる特性を特に「発達特性」と呼ばれることもあります。これらは、本人のまわりの環境やそれまでの努力とは関係なく、生まれ持って備わっているものです。しかし、まわりの人と異なるため、人との関わりでトラブルになったり、学校・社会生活で支障になったりすることがあります。ここでは、上記1〜3を持つ子の特性について書きます。
なお、注意してほしいのは「発達障害の特性があること」と「発達障害」はイコールではないことです。「〜の特性があるから〇〇障害だ」と考える人がいますが、それは間違いです。医療機関の診断や行政機関・学校の解釈には、細かな基準を基に、専門家が特性やさまざまな条件を踏まえて総合的に診断・判断します。その点を十分念頭に頭に置きながら読んでください。
1. 自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害は、Autism Spectrum Disorder (略称ASD)の和訳です。
自閉症の仲間は、以前は「アスペルガー症候群・高機能自閉症・広汎性発達障害」など特性ごとに分けて考えられていましが、現在は「自閉スペクトラム」と捉える考え方が主流となっています(一部除外項目あり)。よって「DSM-5」「ICD-11」どちらの診断基準でも、自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害という名称となっています。
自閉スペクトラム症 / 自閉スペクトラム障害(ASD)の特性
自閉スペクトラム症 / 自閉スペクトラム障害には、以下のように、大きく2つの特性があります。
(1)コミュニケーション、対人関係、社会性
- 臨機応変な対人関係が苦手である。
- 相手の気持ちや表情をうまく読み取れず、非言語的な対人関係が苦手である。
- 友達と仲良くしたくても、関わり方がわからない。
- 比喩や暗黙の了解など、言葉の裏の意味理解が難しい。
- 抑揚のない発語をする。
- 共感性が乏しい。 など
(2)パターン化した行動、興味・活動の偏り、こだわり
- 自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的思考が強い。
- 常同的・反復的な発語(おうむ返し)や行動(常同行動)がある。
- 自分なりの日課や手順がある。急な変更には抵抗がある。
- 極度に限定された興味がある。一般的ではないものへ没頭、執着する。
- 特定の音やにおいなど、感覚刺激に敏感または鈍感である。 など
2. 注意欠如・多動症 / 注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動症 / 注意欠如・多動性障害は、Attention Deficit Hyperactivity Disorder(略称ADHD)の和訳です。DSM-5でもICD-11でも同じ名称です。
似た名前で「注意欠陥・多動性障害」「注意欠陥障害」「多動性障害」がありますが、これらは以前の診断名で現在はすべて統合されて注意欠如・多動症 / 注意欠如・多動性障害となっています。
注意欠如多動症 / 注意欠如・多動性障害(ADHD)の特性
注意欠如・多動症 / 注意欠如・多動性障害には、以下のように大きく2つの特性があります。
(1)不注意
- 細やかな注意ができない。
- 気がそれて集中できない。指示を聞いていない。
- 課題や活動の整理ができない。
- すぐ忘れる。忘れ物が多い。
- 興味がないことは取りかかれない、続かない。興味があることはなかなか止められない。など
(2)多動・衝動性
- 落ち着きがない。
- 静かに過ごせない。じっとしてられない。
- しゃべりすぎる。
- 極度に限定された興味(一般的ではないものへの没頭、執着)
- 待てない。思いついて突然行動する。など
これらについては、「(1)の不注意が強いタイプ」「(2)の多動・衝動性が強いタイプ」「(1)(2)の不注意との多動・衝動性のどちらも同じくらいのタイプ」の3タイプがあります。程度には個人差があり、いっしょにいる相手や場所によって変化することもあります。
3. 学習症 / 学習障害(LD)
学習症 / 学習障害は、医学的な見方としての名称 Learning Disorder と、教育的な見方としての名称 Learning Disabilities があります。どちらも略称は「LD」です。
医学的な診断名は、DSM-5では限局性学習症(Specific Learning Disorder、略称SLD)、ICD-11では発達性学習症(Developmental Learning Disorder)となっており、名称は異なりますが診断の中身はほぼ同じです。
学習症 / 学習障害(LD)の特性
学習症 / 学習障害には、「基礎的な学習技能」の習得が困難という特性があります。
基礎的な学習技能の対象
医学的な見方と教育的な見方では、その対象が、異なります。
このように、教育的の方では「聞く・話す・推論する」を含めたより広い技能を対象としています。
困難の程度
上記の「文部科学省の報告書」の別紙では、校内委員会(学校)が学習障害として実態を把握をするための基準が、試案として示されています。
別紙「学習障害の判断・実態把握基準(試案)」
A. 得意な学習困難があること
1.国語または算数(数学)の基礎的能力の著しい遅れがある。
- 現在及び過去の学習の記録等から、国語または算数(数学)の評価の観点の中に、著しい遅れを示すものが1以上あることを確認する。この場合、著しい遅れとは…
小学2、3年 → 1学年以上の遅れ
小学4年以上または中学 → 2学年以上の遅れ
ただしこれらは「試案」のため、あくまで文科省としての参考基準です。実際は、各教育委員会がそれぞれの判断で実態把握を行うことになっています。
(参考)
「学習障害児に対する指導について(報告)」
(平成11年7月 文部省、学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議)
まとめ
ここまで、「自閉スペクトラム症 / 障害」「注意欠如・多動症 / 障害」「学習症 / 障害」の特性などについて書いてきました。前回の「発達障害とは」でも触れましたが、これらはすべて「発達障害者支援法の対象」のため行政や学校のサポートを受けることができます。
では、学習障害(LD)で文科省基準(試案)にある「国語または算数(数学)の基礎的能力の著しい遅れ」にはどのようなものがあるのでしょうか?
次回は「読む、書く、算数、聞く、話す、推論する」の6項目について、具体例を挙げて解説していきます。